賃金3.1%、福利厚生3.9%増:米国の人件費にある二つの速度
会社の人件費が増えても、給与が同じ速さで増えるとは限りません。米労働統計局が2026年10月30日に公表した9月ECIでは、民間と州・地方政府を合わせたcivilian workersの総報酬費用が前年比3.4%、賃金・給与が3.1%、福利厚生費が3.9%増えました。
給与の外にも人件費がある
ECIは雇用主が労働に支払う費用の変化を測ります。給与だけでなく有給休暇、保険、退職関連費用なども含むため、現金給与と総報酬は異なる速度で動きます。
職種と産業の構成を固定し、高賃金の仕事が増える効果と費用そのものの変化を分ける指数です。同じ人の昇給交渉を追った数値ではありません。また今回のcivilianには連邦政府職員や軍人は含まれません。
四半期の減速と年間の積み上がり
9月までの3カ月で総報酬費用は季節調整済み0.8%増と、6月までの0.9%から鈍化しました。賃金・給与は0.7%、福利厚生は0.9%増です。両者を足して総報酬1.6%とは計算できず、それぞれの比重が反映されます。

12カ月では総報酬3.4%、賃金・給与3.1%、福利厚生3.9%増でした。2枚目の図は年間比較を別に示しています。四半期は季節調整済み、年間は未調整で、同じ期間の数値ではありません。

民間の購買力は別の視点が必要
民間だけでも年間の増加率は3.4%、3.1%、3.9%でした。一方、物価調整後の民間の賃金・給与は0.6%減です。名目給与が増えても、この集計では購買力は落ちました。
昇給のニュースと暮らしの厳しさが両立する理由が見えてきます。実質減少は民間の数値で、図はcivilian全体という範囲の違いがあります。福利厚生費3.9%増も、個人が受ける給付の量や質が同じだけ改善した意味ではありません。
保険料が賃金を押しのけたのか
保険は福利厚生の一部で、3.9%は保険だけの上昇率ではありません。この発表だけで医療費が賃金をどれだけ抑えたかは計算できません。速度の違いと因果関係は別の証拠を必要とします。
企業の費用台帳と給与口座は、関連しつつも違う金額を記録しています。四半期の伸びが少し鈍っても生活費負担がすぐ軽くなるわけではありません。次回も賃金と福利厚生を分けると変化が見やすくなります。本記事は情報提供であり投資助言ではありません。